「日本舞踊の可能性」公演 公式サイト


日本舞踊の可能性vol.8
2026年11月13日(金)、14日(土) 、浅草公会堂にて開催する「日本舞踊の可能性 vol.8」。先日実施した取材会では、本公演に出演する西川扇藏さん、花柳寿楽さん、山村友五郎さんという五耀會の面々が、芸術監督を務める蘭黄とともに登壇、上演作品『門司春秋』『徒用心〜セビリアの理髪師〜』への取り組み、意気込みを語り合いました。
左から 西川扇藏さん、藤間蘭黄、山村友五郎さん、
花柳寿楽さん ※花柳 基さんは欠席
「日本舞踊の可能性」は今回が8回目。上演作品について蘭黄は、「ともに純然たる邦楽で踊りますが、それぞれ古典と比べると少し毛色の変わった二作品です」と紹介しました。
『徒用心〜セビリアの理髪師〜』は、オペラの名作を日本舞踊版に書き換えた、楽しさあふれる作品です。「14年前、私の50歳の誕生日に発表した作品で、私が作詞をし、杵屋勝四郎さんに作曲していただきました。完全に五耀會の五人に当て書きしたものです」と蘭黄。今回は8年ぶり7回目の上演で、「この5人で一つの作品を提示することを続けたい」という思いから再演が決まりました。
五耀會の面々も、作品への思いを語ります。


扇藏さんが演じるのは、『セビリアの理髪師』のバルトロに当たる尾張屋 萬蔵。「当時は箕乃助でしたが、皆さんから『いつ扇藏を襲名するの?』と散々言われていて、扇(セン)藏を飛び越えて萬(マン)蔵というお名前を蘭黄さんからいただきました。いま晴れて扇藏になり、その名前をまた飛び越え、萬蔵というお役をひしと受け止めて、させていただきます」。公演ビジュアルの写真を見て、「あんな顔してた?という写真を使っていただき(笑)、嬉しい限りでございます」と笑顔に。
友五郎さんが演じるのは、ドン・バジールに当たる舞師匠 幡士十郎。「僕だけ大阪なので、蘭黄さんが出番を少なめにしてくださいましたが、お稽古を見ているととても楽しそうで、『そこも出たい』と出ることにしてもらったところも。思い出深い作品です」。
ヒロイン、ロジーナはお梅という名に。演じる寿楽さんは、「そろそろ蘭黄さんが『役替えしよう』とおっしゃるかなと思ったまま、とうとう今日まで来てしまいました(笑)。お梅がお梅婆さんにならないよう、それだけ気をつけて頑張っていきたいなと思います」と場を和ませます。
蘭黄による当て書きについては、「そういうキャラクターだと見られていたのかな。淡々とした友五郎さん、基さんは闊達に動く人ですし、二枚目の蘭黄さん、綺麗な寿楽さん──。多分そうですね(笑)」と扇藏さん。寿楽さんは、「素踊り形式だからこそ、本来の役だけでなく、日本舞踊ならではの演じ分けができる、この五人でやりたい、と当初話されていたように思います」と振り返ります。虫になったり雷になったり、本人の役柄以外のところもそれぞれが意見を出し、皆で練り上げてきた作品。2日間の公演ですが、「それぞれ全く違う上演になるのでは」という話から、「2回目は役替わりになる?」「ないない!」とユーモアが炸裂。



蘭黄も、「強者の四人が磨いてくださる。実演者に頼る部分が大きい」と信頼感を寄せます。さらには、浅草公会堂の広い空間を用いた演出の工夫、初演時と同様、足立恒さんが照明家として加わることにも触れました。音楽は録音音源を使用しますが、録音版では、五人のキャラクターを勝四郎さんが一人で全部歌い分け、「そのキャラの立った声が流れるだけで会場内がどよめく」と絶賛です。
一方の『門司春秋』は、友五郎さんと蘭黄による素踊りです。「北九州・門司港の太古から現代までの歴史を、ぎゅっと20分に圧縮した作品。東アジア文化都市北九州2020▷21の開幕式典のために書き下ろしました。作曲は、当時は東京藝術大学に在学中で、いまは杵屋小三郎さんというお名前になられた坂口あまねさん。これが処女作でした」。蘭黄はさらに、「それまで友五郎さんと二人で、という機会はなかったにも拘らず、友五郎さんにこそやっていただきたいシーンを作ってしまった。もう友五郎さんしかいない、と二人で踊らせていただきました」と打ち明けます。コロナ禍での初演は無観客で配信のみでしたが、昨年11月、大阪・国立文 楽劇場で開催した紫紅会で、初の有観客上演が実現。「一緒に踊ってみるとやはり面白い。せっかく北九州から大阪まで上ってきたのだから、もう少し頑張って東京で」と本公演に至る経緯を説明しました。


友五郎さんにとっても、思い入れの深い作品となったそう。「コロナ禍で、自分の立ち位置や何をすればいいのかもわからずにいた時にお話をいただき、やはり舞台に立ちたい、と思わせてもらった作品です」。昨年の国立文楽劇場での手応えにも触れ、「女性の役のところがあり、ちょっと力持ちの男勝りな感じですが、とても気に入っていただきました。言葉から入ってくる風景が力強く、変に動かずにただ聴いていただくほうがええかな、という場面もあるくらいですが、頑張ります」と意気込みます。
蘭黄からは、創作を前に門司港を訪れた際に触れた、地域の知られざる歴史も紹介。太古から続く和布刈神社の神事、関門海峡を通った弘法大師ゆかりのお堂、朝鮮出兵の際、秀吉が乗る船が難破し、切腹させられたという船頭の名が与次兵衛ヶ瀬として残っていること。土砂崩れで山から落ちてきた伝・知盛の墓が甲宗八幡宮にあるという発見も。文明開化の頃は筑豊の石炭の積み出し港として栄え、「戦後ここを訪れたサルトルとボーヴォワールが、これが男女平等の究極の姿だと発言したそうですが、港湾労働者の中には女性もいた。そんなシーンも作りながら、平成、令和と繋がっていく、という歌詞を書かせていただきました」と熱く語りました。
初演時には、伝統工芸品の小倉織で海と松林を表現する舞台美術が製作されました。その後失われたと思われていましたが、現物が倉庫から発見されたり、保管されていた試し刷りが使えることになったりしたエピソードも披露。この舞台美術にもぜひご注目を。
創作秘話や稽古でのエピソードなど、様々な話題が飛び出した取材会。浅草公会堂での公演に、どうぞご期待ください。
